篠のひびき(第11回)
自主企画の「篠のひびき」と題したコンサートを始めさせていただいて、数えてみますと前回が10回目でした。
自主企画でなくても「篠のひびき」とさせていただくこともあるので、今回が何回目かわかりませんが、
同じ流れの中で数えると11回目ということになりましょうか。
今年は川越市市制施行100周年という、記念すべき年ですが、
思えば10年前の90周年の頃に、100周年の時には何かできたら嬉しいな・・と
漠然と考えていました。何か人様のやってくださる行事に参加させていただくような
イメージでおりましたが、現実はこんなこと(コロナ禍であったり、いろいろ・・)になり、
昨年おっかなびっくりさせていただいて、何とか開催できたことに勇気づけられて、
今年は、ゲストをお二人お招きしての開催となりました。
尊敬する故・寶山左衛門先生のご息女にあたられる、福原道子さん。
そして、私の1枚目のCDの頃からご協力いただいており、常に国内のみならず世界中で活躍なさっている木村俊介さん。
お忙しいお二人に揃ってご出演いただけたのは、逆に今この時期だったからかも知れず、
その点はとても嬉しく有難いことでした。
プログラムは
<第一部>
寿獅子素囃子 篠笛・大野 太鼓・木村
~通り神楽・屋台・早鎌倉・四丁目・早鎌倉・子守唄・屋台・本間・大黒舞・仁羽・神楽昇殿・屋台~
川越舟歌追想 篠笛・大野(独奏)
さとの子守唄 篠笛・大野 木村(二重奏)
想月歌 篠笛・木村(独奏)
ノクターン20番cis moll(Chopin) 笛・木村(独奏)
海 笛・大野 三味線・木村
<第二部>
雪~月の舞 能管・大野(独奏)
荒城の月~赤とんぼ 能管・篠笛 福原(独奏)
越後獅子 篠笛・福原(独奏)
竹の唄 篠笛・福原(独奏)
三春幻想 篠笛 能管・大野 福原(二重奏)
(アンコール)三人で
毬と殿様
村祭り(天国と地獄)
ゲストお二人のファンの方もいらしたこと、それから平日昼間の開催でしたが、却って学生さんの団体さんが聴いてくださったこともあり、お蔭様でチケットは9月頭に完売となりました。
嬉しい悲鳴である半面、10名以上入場お断りさせていただかなくてはならなかったこと、
ある意味、お客様が少ない以上に辛いことではありました。
が、もうしばらくがんばって吹いていきたいと思いますので、今回がおしまい、ではなく
今後もお付き合いいただければ嬉しいです。
ご感想もたくさんお寄せいただき、ありがとうございました。
演奏者もそれぞれに緊張感の中、楽しい時間を過ごすことができ、嬉しかった!感謝です。
市制施行100周年記念の冠付けの許可もいただいた公演でした。
続く週末、3年ぶりに復活の川越祭りの先触れともなれればと、
古典、獅子舞の曲を始めに致しました。これだけで20分近くかかりましたが、
開演前にちょっとした解説をさせていただきました。
二曲目の川越舟歌と共に、風景が浮かぶようだったとのお言葉いただいた時には、
伝えたいことが伝わった気持ちが致しました。
又、三者三様の笛がよかった、それぞれのコラボレーションもよかったとのお言葉をいただけて、
笛の音は、普段お稽古をしていても思うことですが、人の声のようなところもあり、
たかが笛?されど笛!!で、ひとつひとつの奥の深い音色を楽しんでいただけたらよかったと
思っております。
プログラムの最後、
三春幻想、は、福原道子氏の父上、寶山左衛門師の作曲です。
郡山の近く、三春の滝桜で有名な三春には、三つの春が一度にやって来る、
という素敵な解説を道子先生よりいただき・・・。
生徒さん達にも人気の曲ですが、なんだか畏れ多い気がして、今まで人前で吹いたことはありませんでした。こんな機会をいただけたこと自体が有難いことですが、今回の為に特別な工夫をいくつか施しました。低音の三笨調子で”冬”の部分を始めて、”春”で、五笨調子に持ち替え、最後の”秋”は、オリジナルは独奏ですが、せっかくですので、ほんの少しだけ手を加えて、二重奏で終わる、というように致しました。快くお許しくださった福原道子氏に感謝申し上げます。
しっとりと終演、でもよかったのですが、三人で演奏する、という場面がありませんでしたので、
アンコールという形で少し遊びの要素を入れて、皆様おなじみの二曲、「毬と殿様」そして「村祭り」で景気よくお別れの曲といたしました。
遠くは北海道から聴きにいらしてくださった方も。ありがとうございました。
スタッフ制作の手作りプログラム
永年笛のお稽古をしていらっしゃる吉澤重克さんから、後日、一曲一曲についての丁寧なご感想をいただきました。こんな風に丁寧に聴いてくださって、こうしてご感想を寄せてくださったこと自体に感激してしまいました。演奏者冥利に尽きます。感謝を込めて、こちらへ転載させていただきます。
1 寿獅子素囃子
久し振りのお囃子を堪能しました。太鼓も見事で、本来はこのように華やかに吹き、叩くものと思うのですが、昔と違って今はお囃子を聞く機会があまりなく、今日は楽しませていただきました。途中、江戸の子守唄も入り、とても素晴らしかったです。
2 川越舟歌追想
いかにも昔からの舟歌らしく、のどかで絵のように船頭さんが気持ちよさそうにうたっている情景が心に浮かんできます。前のお囃子の華やかさと対照的に、気持ちよくなり眠ってしまいそうでした。
3 さとの子守唄
ゆったりとした、表題そのままの里の情景が浮かびます。昔の子守唄は労働でつらかったはずですが、この曲は非常に安らかに聞こえ、心地よいのが好きです。旋律もとても美しく、私の好きな曲の一つです。
4 想月歌・夜想曲
津軽笛(左右の薬指をふさいで残りの指で吹く)
曲の前半は、足でシャンシャン鈴を鳴らしながら吹くのどかな曲で、中間部は速く、木こり?や山で作業中のようで、最後は静かに終わる、田舎の地方が彷彿とさせるような素朴な曲で、少し変わった曲と感じました。一区切り後、私には月世界に行ってしまった「かぐや姫」を思いながら、時に静かに、時に激しく吹く何かに対する葛藤のように感じました。
木村先生の曲は私には何か新鮮に感じられました。
5 海
広々とした海と、こきざみに寄せるさざ波のような三味線が効果的、そしてその後、力強い三味線の演奏に続き、海の激しさが正体を現すが、それが静まり再び穏やかな海に戻る、一時収まるが再び海の荒々しさ、自然の厳しさで終わるという、自然描写とその心の描写に圧倒されました。
2部
1 雪~月の舞
能管は何回聞いても不思議な音色と音階?で、普段なじみはないが、掻き立てる何かがあるのは確かです。正直曲名との関係はわかりませんでしたが、雰囲気を感じ取ることはできました。
2 荒城の月~赤とんぼ
前奏の能管で静けさを醸し出し、そして篠笛での「荒城の月」、この歌の歌詞ぴったりの演奏で素晴らしいの一言です。次の「赤とんぼ」の澄んだ音色が美しく、普段私が吹いているのとは雲泥の差。このような一見易しい曲を美しく吹くことはかなり難しいと思いますが、福原先生のこの演奏をきき、改めて吹きたくなりました。
220年前の曲「越後獅子」は意外にゆっくりと演奏され、このような吹き方があるものかと、気に入りました。
「竹の唄」の独奏は私たちが習った曲とは一味違った雰囲気を感じました。低音が静かに響き、寶山左衛門先生の名曲中の名曲と思いました。
「三春幻想」
大野先生と福原先生の二重奏が美しく、感動しました。
春から始まる、といってもまだ早春と思われる暗い感じから始まる(教室の説明では冬から始まるということでしたが)。田舎の早春の情景に感じました。段々光が差してきて、少し明るくなっていく雰囲気でしたが、しかし命の息吹が始まったばかりに思えました。ここから両先生の二重奏になりました。眠りから覚め、明るい日光が、自然が、静かに目覚めだした情景が感じられました。このような演奏は、心から素晴らしいと感じ、心が震える思いでありました。この後の演奏は心酔してよく覚えていません。とにかく両先生の演奏と、寶山左衛門先生の曲そのものと、それを演奏された両先生の芸術的演奏には、聞きながら我を忘れてしまいました。
アンコール(3人で)
曲は、「毬と殿様」と「村祭」で、昔から私たちが小学生の時、親しんだ歌です。いまだに郷愁を感じます。
演奏は、3先生の単なる合奏ということではなく、大変面白く見、ききました。木村先生の打楽器が特徴をいかんなく発揮していました。「村祭」の途中に、あの「天国と地獄」が挿入されていたのには驚かされましたが、つい手拍子を取りたくなりました。単なるアンコールではなく、このような趣向もとてもよかったと思います。